米駆逐艦の横浜での基地外修理、弾薬搭載したままか?


修理のため三菱重工横浜製作所本牧工場のバースに入港中の駆逐艦ミリウス。手前は人出の多い本牧海釣り施設


正面から見たミリウス。右舷・左舷とも同じ位置に白いシートが貼ってある(19.5.2 頼 撮影)

4月19日、任務航海中の米駆逐艦ミリウス(DDG 69)が横浜市中区の三菱重工横浜製作所本牧工場のバースに接岸した。
神奈川新聞によれば、定期整備を受けるため、とのことだ。

国内では初めてという基地の外・民間会社での修理であることについて、米軍は「米海軍の即応性を支えるため、施設が限られている基地の外にも選択肢を広げた」と言っている(2019.4.19 神奈川新聞)
これは米海軍の本音だろう。

横須賀配備の艦船に事故が相次ぎ、先延ばしにされていた艦船の修理や乗組員の教育研修を始めた結果、横須賀基地に停泊する艦船が増えた(外に出ている船が減った)
横須賀配備の艦船をどんどん増やしてきたツケも回ってきて、横須賀基地内のバースが不足する事態になった。だから基地外の民間会社で修理を行う、ということだ。

これは「基地の拡大」にほかならない。米軍が自分で認めていることを、南関東防衛局は「これは基地の拡大ではない」という(同記事)。米軍の本音を防衛省が捻じ曲げて国民に伝えている。

では、この整備は「定期整備」なのだろうか。
ミリウスは昨年9月下旬から12月下旬にかけて、約3か月の定期整備(Selected Ristricted Availability 略称SRA)を受けた。定期整備が明けて4か月足らずで、また定期整備を受ける のだろうか?

事前にスケジュールが決まっている定期整備なら、横須賀基地に戻り、任務航海を終了させてから整備に入るのではないか?直前の寄港地の沖縄・ホワイトビーチから3日間の航海で横須賀を 素通りして本牧の民間工場に入ったのは、この修理が予定外のもので、航海中修理(Voyage Repairs)の範疇に入ることを示してはいないだろうか?


昨年、横須賀基地のマスターピアで定期整備中のミリウス。艦橋全体がシートで覆われている(18.11.25 頼 撮影)


定期整備終了後、弾薬を積み込むために横須賀港外で錨泊するミリウス(18.12.26 頼 撮影)

今回の修理が「航海中修理」であれば、ミリウスは積んでいる弾薬(ミサイル、砲弾など)をおろさずに横浜港内で修理を受けている可能性が強い。

ミリウスは2018年12月26日に、SRA終了後初めてバースを離れて錨地まで航行した。修理前に下していた弾薬類を積み込むためだ。2日後に横須賀本港に戻ったミリウスは、翌2019年 はじめに5週間の任務航海に出た(1月7日〜2月11日)。横須賀に戻ってきて3週間足らずで、再び出航したミリウスは、4月中旬にホワイトビーチに寄港するまで、他の寄港地に寄った 形跡はない。

ホワイトビーチでも、フェスティバル参加艦船の一隻として係留されていて、弾薬などは下さなかった。(そもそもホワイトビーチに、駆逐艦一隻分の弾薬を保管する施設はない)

ホワイトビーチから3日で横浜に入港したミリウスは、任務航海中に積んでいる弾薬をおろす時間はなかったとみられる。その点からも、ミリウスは弾薬を搭載したまま三菱重工の本牧工場 で修理を受けている可能性が強い。

「横浜市は港湾法に基づき、ミリウス修理のための『水域占有』を許可した」(朝日新聞デジタル2019.4.28)。港湾管理者として、横浜市は弾薬搭載の有無を米軍に確認したのだろうか?

(RIMPEACE編集部 頼 和太郎)


4月14日、ホワイトビーチの海軍岸壁に停泊する駆逐艦ミリウス



ミリウスに搭載されている武器の一部。左上から右回りに、対艦ミサイル、機銃、ミサイル発射装置VLSの上部、速射砲
三菱重工横浜製作所本牧工場バース寄港の5日前。ホワイトビーチふ頭、およびミリウス艦上で。(2019.4.14 伊舎堂 達也 撮影)


2019-5-5|HOME|